「ありがとうございました〜」
無事、アルの部品を購入したソースケはようやく一安心です。
(急いで帰ろう。もうこんなのはごめんだ。)
と、思ったのですが・・・、
ふと、公園の時計台に目を走らせるともう電車の時間になっていました。
(迎えの時間か・・・)
どのみちこの姿では誰も気付いてはくれないと考えましたが、もう習慣になっているせいか、どうにも気分が晴れません。
(行くだけ行ってみるか)
そう結論付けてソースケは駅へと足を向けました。
駅へ到着すると、ソースケはいつものベンチに腰掛けました。
「今日は人が多いな」
この時間は帰宅ラッシュの真っ只中なので、いつも人は多いのですが、今日は人一倍多いようです。
頑張って少佐を探そうとしますが、人が多すぎて探しきれません。
(いつもなら匂いで探すのだが・・・)
人間になっていては鼻はほとんど利きません。今日は諦めるしかないようです。
(・・・帰るか)
ソースケはおもむろにベンチから立ち上がりましたが、ふと、ある光景が目に入りました。
(・・・かなめ?)
彼の視線の先にはいつも(犬の)自分に食事をくれる少女の姿が。
ソースケは自然とそちらに足を向けました。
「あいたたたた・・・」
「ちょ、おばあちゃん大丈夫?」
部活の帰り、かなめが電車を降りて改札を出ると、ホームの柱の近くでおばあさんが座り込んでいました。
かなめが声をかけると、どうやら足をくじいている様です。
(参ったなー。あたし1人じゃちょっと運んであげられないなぁ)
仕方なく、かなめが駅員さんを呼びに行こうとしたその時、背後から声がかかりました。
「どうかしたのか?」
かなめが振り向くと、そこにはどこぞの作業着を着た散切り頭でむっつり顔の青年が立っていました。
「あー、このおばあちゃんが足くじいちゃったみたいで歩けないのよ」
「・・・大変そうだな」
その一言にかなめはむっとして、
「何よ。他人事だからって」
「良ければ俺が運ぼう」
「へ?」
「俺が運ぶといったのだが?」
「え、あ・・・じゃあお願い」
「了解した」
(了解した・・・ってあんたどこの軍事オタクよ?)
かなめが内心そんな事を思っているとはつゆ知らず、ソースケはおばあさんに話しかけます。
「ところでご老人、家はどちらですか?」
「あぁ・・・すぐ近くだよ。すまないけどお願いできるかねぇ?」
「問題ありません」
おばあさんの前にしゃがみこんだソースケは軽々とおばあさんをおんぶして歩き出して、かなめに声をかけました。
「おい」
「煤I・・・な、何よ?」
「荷物を運んでくれ。俺は手が塞がってしまった。」
「あ・・・、うん」
かなめはおばあさんとソースケの荷物を手に取り、ソースケの後を追いました。
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